贄の町新聞
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35
「じゃあ、それまでおハナシしよ」

35が床に座ったから、俺も隣に腰を下ろした。

日天
「話か……たとえば?」

35
「ひそらのことなら、なんでもキきたい」

日天
「突然そう言われてもな……

何も思い浮かばない。
けど、35の眼差しは期待に満ちている。

日天
……昨日、川で泳いだけど、
実は人生で初めてだったんだ。楽しかった」

いや……35が聞きたい話って
こういうことじゃないよな。
もっと話題が豊富に出てくる人間になりたい。

日天
「ごめん。つまんないよな」

35
「なんで、そんなコト、イうの? ツヅき、は?」

日天
「え? あー……あの後、宿に戻って
すごく気持ち良く眠れた」

35
「ふん、ふん」

日天
「俺、この世界に来てあと数ヶ月もすれば一年だけど、
その中で一番気持ち良く眠ったかもしれない」

35
「ふん、ふん」

日天
「夜は、ココが作った肉づくしのご馳走だった。
あれは多分……昼に、35がココの卵焼きを
吐きだしたからだぞ」

35
「ふん、ふん」

さっきから頷いてばかりだな。
でも、本当に楽しそうに聞いてくれる。

最初は変わった奴だなって思ってたけど……
いや、実際変わった奴だとは思うけど、
35から悪意は感じない。

俺よりもでかい男なのに、
なんだか、子供が懐いてきてるみたいな感じだ。





日天
「俺、体からちょっと特殊な匂いがするからさ。
宿の皆に迷惑をかけてるんだよな。それが申し訳なくってさ」

日天
「なんとかならないかって思ってるんだけど、
これがどうにもならなくて……

35
「ウン。ひそら、いいニオいがする」

35が体を寄せてくる。
犬みたいに鼻を近づけて、くんくんと匂いを嗅ぎ出した。

日天
「35。言っとくけど、俺を噛んだり、食べたら、怒るからな」

35
「ワかった、じゃあしない」

じゃあってなんだ。
言わなかったらしようとしてたのか。

そう文句を言おうとしたけど、その前に
相変わらず近い距離で匂いを嗅ぐ35の鼻が
首筋に触れて、背筋にぞわっとしたものが走った。

日天
「おい、くすぐったい。やめてくれ」

35
「ナンで?」

日天
「何でって――

35
「れろっ」

日天
「ひゃっ!」

35は、まるで味見をするかのように、
頬を舐めてきた。

日天
「ちょ、くすぐった、ひっ! やめっ、」

35
「れろっ、だって、ひそら……ン。あまくて、ナメたくなる」

日天
「くっ、っはは! こら、ほんとに! やめろって!」

べろんべろんと俺を舐める35の力はとても強くて、
ちょっと押しただけじゃびくともしない。

その間にも耳や首筋を舐められ続けて、
そのくすぐったさに腰が浮いてしまう。