贄の町|絵画
    

  1. 夕陽の中で、スカートの裾が黒く浮かび上がってひらひら揺れている。
    それから……、季節外れの丸い麦わら帽子……。
    一瞬、女の子かと思ったが、歩き方がどうもぎこちない。


    それに、手も足も妙に細くて、ひょろひょろしている。
    黄昏時の燃える夕陽の赤があまりに強すぎて、よく見えない。


    こちらへ向かってくる黒い人影に目を細めたその時――。


    ギシッ、ギシッ、ギシッ。ギシッ、ギシッ、ギシッ。


    骨が軋んですり潰されているような、とても嫌な音が響いた。


    そして、近づいてくる人影の細い腕がにゅううっと伸びたかと思うと、赤い夕陽の中から不気味な少女が現れた。
    潰れた両目から血を流し、ひらひら揺れるワンピースも異様に長い両腕も血だらけだ。


    日天
    「――ひっ」


    沸き起こる恐怖で喉が引き攣って鳴る。
    なんだ……、なんだよ、これっ。


    血塗れの少女
    「イイ、ニオイ……」


    おぞましい声に鼓膜をなぶられた気がして、ぞっとした。

  1. ガンッ! ガンッ! ゴリッ、グシャッ!


    凄まじい勢いでバットが振り回され、男たちの頭が潰れて血が噴き上がる。
    まさに秒殺の早業におれは呆然と立ち尽くす。


    飛び交う怒号と悲鳴と血しぶき。あまりに凄惨な光景に思わず足がすみ、きつい血臭に吐き気を覚えて目が眩む。


    不良3
    「あ、が、が……」


    不良4
    「ぐぅ……ぇっ」


    不良1
    「あすく……っ、てっめえ!」


    不良2
    「今日という今日は許さねえからな!」


    あすく
    「どの口がほざいてんの? 馬鹿じゃない?」


    冷淡に笑ったあすくが、一番近くの男にバットを振り下ろした。

  1. もう寝ちゃったんだろうかと思ったときだった。
    ココの手が俺の腰に巻きついた。
    その手は浴衣の前を割って、俺の腿を撫でた。


    日天
    「――ちょっ、ココ? くすぐったいって」


    ココ
    「くすぐったいだけ?」


    ココの手が脚のつけ根に触れる。
    そして、下着ごと俺のペニスを握りこんで、扱く。
    ゆるゆるとした動きだったけど、俺は電流が走ったように感じた。


    日天
    「うっ、わ……っ」


    ココはきっと何かの悪ふざけのつもりなんだろう。
    だけど、こういうのは困る。
    二十歳にもなって自慢できる話じゃないが、俺は童貞だ。


    だから、経験のない他人の手の動きに、身体が必要以上に反応してしまいそうな感じだ。
    触られてすぐ勃起するなんてみっともないし、童貞だとバレるかもしれない。


    日天
    「ココ! おい、ココ、やめてくれ!」


    俺は必死で懇願した。
    だけど、ココはやめてくれない。
    それどころか、ますます指の動きを怪しくして、下着の上から俺のペニスをぐいぐい擦る。


    日天
    「……んっ。ふ、う……っ」


    幹の部分を掌で押しつぶされ、敏感なカリ首を撫で擦られて、俺のペニスはぐんぐん熱をはらんでいく。
    このままじゃ勃ってしまいそうだ。
    俺は腰を捩って逃げようとしたが、できなかった。


    ココのもう片方の手が、腰にしっかり巻きついているせいで。


    日天
    「――コ、ココっ」


    くびれた箇所をずりっと強く擦られた拍子に、俺のペニスは根元からくねって、ごまかしようもなく膨張した。


    日天
    「う、ぁ……っ」


    びくびくと脈打って反り返ったペニスの先端が、下着の端からはみ出てしまった。
    その無防備な状態の亀頭を指の腹で押し撫でられ、鈴口がくぱくぱと開閉を繰り返す。


    ヤバ……い。出ちゃう、かも……。


    日天
    「あっ、ぁ……」


    ココ
    「……」


    無言のまま俺のペニスをいじってくるココが、怖かった。
    ほんのちょっと触られただけで、勃起して、射精しかかっている自分の身体が恥ずかしかった。


    もう、訳がわからなくなり、気がつくと俺は涙をこぼして、ぐすぐすと洟を啜っていた。


    日天
    「う、う、ぅ……っ」


    ココ
    「……え? あれ? 日天くん、泣いてる?」


    ココがふいに、慌てたように手をとめた。

  1. 頭と胸がとにかくぐるぐるして、気持ち悪い……。


    日天
    「酒……、飲み、すぎた……っ」


    笑男
    「ああ、何だ。はいはい、吐きたいのね」


    気のせいか、妙に楽しそうに言った笑男が、押入から黄色い湯桶を取り出して、俺の前に置いた。


    笑男
    「はい、どうぞ」


    日天
    「……これ、風呂場のやつだろ? 何で、ここにあるんだ?」


    笑男
    「んー? 前にかっぱらってきたまま、忘れてた」


    笑いながら、笑男が俺の背後に回り、背中をさすった。


    笑男
    「はい、吐いて~。一気にゲロ~っといこう、ゲロゲロ~っと」


    変な調子で促されたけど、なかなか吐けない。
    すごく気持ちが悪いのに、それが喉の奥で詰まってる感じだ。


    日天
    「……吐け、な……」


    気持ちが悪いのに吐けなくて、その苦しさに息を荒くしたとき、


    笑男
    「じゃ、手伝ってあげる~」


    楽しそうに言うなり、背中にのし掛かってきた笑男が俺の口の中へ手を突っこんだ。


    日天
    「――ぐぅっ」


    驚いて口を閉じようとする俺の意思なんかお構いないしに、笑男がぐいぐい手を突っこんでくる。
    そして、喉の奥を指でぐうぅっと捏ねられた。


    日天
    「――ううぅっ」


    強烈な吐き気が突き上がってきて、俺は笑男の手を力任せに引き抜いて、吐いた。


    日天
    「うえぇ……っ。うえっ、うええぇ……っ」


    吐瀉物がぼたぼたと湯桶の中に落ちて溜まる。


    笑男
    「全部、出た?」


    日天
    「……わかんな……。まだ、ちょっと、気持ち悪……」


    笑男
    「じゃ、まだ残ってんだよ。こういうのは、全部一気に吐いちゃわないと」


    耳もとで笑う笑男に、また手を突っこまれ、喉を指で捏ねられる。

  1. あすく
    「まず、先っぽを咥えて、舐めて。歯、立てないようにね」


    言われた通り、俺はあすくの亀頭を唇に挟み、呑みこんだ。
    口の中の粘膜が灼けそうに熱い。
    先端の割れ目を中心にちろちろと亀頭の丸みに舌を這わせていると、あすくがさらにぐっと膨張した。


    日天
    「――うっ、ふぅっ」


    驚きと不意打ちで口腔を圧迫された息苦しさで、思わず口を離してしまったが、あすくは怒らなかった。


    あすく
    「次は、カリ、舐めて」


    言われ、俺は高くくびれた部分を舌先でなぞった。


    あすく
    「……そう。そのまま裏筋舐めながら、下へ……行って」


    あすくの声が少し掠れている。
    気持ちがいいんだろうか。
    もっと気持ちよく――機嫌をよくしてほしくて、俺は張りのあるなめらかな皮膚を強めに舐めた。


    日天
    「んっ……、ふっ……、んっ」


    俺が舐めるつど、あすくが硬くなって、どくどくと脈打つ。
    その熱い脈動に軽い目眩を覚えながら、俺は懸命に舌を動かした。


    日天
    「んっ、んっ、ん……っ」


    あすく
    「へえ……。初めてのわりに、結構上手いね、あんた……。タマも舐めてみて」


    言われるがまま、俺はあすくのペニスの根元へ舌を移動させ、陰嚢を舐めた。


    日天
    「んっ、ふぅ……。う……っ、んっ」


    あすくは、いつのまにか先走りを迸らせていた。
    それが幹を伝って流れ落ち、陰嚢を濡らすせいで、
    俺が舌や唇を動かすつど、ぬぱぬぱ、ぬちゅぬちゅと粘りつく音が響いた。


    その水音が、最初は恥ずかしかった。
    だけど、接触している部分から俺の身体に流れこんでくるあすくの熱のせいで、
    だんだんとそんな感覚も麻痺してきた。


    日天
    「んっ、う……、んっ」


    びくびくと収縮を繰り返している熱い皮膚に舌を絡ませ、つつき、吸う。
    俺は、いつしか初めての行為に夢中になってしまっていた。


  1. 俺は紙袋からほうれん草を取りだした。
    そして、次の瞬間、ぎょっとした。
    今まで一度も見たことのないグロテスクな虫が、葉をくねくねと這っていた。
    あまりの気持ち悪さに俺は思わず叫んだ。


    日天
    「――うわっ!」


    ココ
    「え? ――っ」


    ココが低く呻いたのを不思議に思って見ると、包丁で指を切ったようだった。
    指先から血が出ている。痛そうだ。
    ――自分が驚かせたせいだ。


    日天
    「ごめん、ココ。虫がいて、びっくりして……」


    申し訳なさが込み上げてきて、俺は咄嗟にココの手を取り、指を口に含んだ。
    形のいい指先を吸い、血を舐め取る。


    ココ
    「……日天くん。それ、わぁ、だよ……」


    俺を見て、ココが困惑顔で苦笑する。


    日天
    「……あ。そう言や、傷は勝手に治るんだよな」


    ばつが悪い思いで、俺はココの指を離した。


  1. そう言った成臣の手が、ふと俺の頭へ伸びてきた。


    成臣
    「寝癖、ついてますよ」


    日天
    「え、そうか?」


    成臣
    「ええ。少し、じっとしててくださいね」


    鏡なんてまじまじ見ないし、誰にも指摘されなかったから
    気づかなかったけど、結構きつい絡まり方をしてたみたいだ。
    成臣の指先がぎしっと引っかかった。


    俺、猫っ毛だから、しょっちゅう毛が縺れるんだよな……。
    成臣はその絡まりをほぐそうとしてくれたが、なかなか上手くいかないようだ。
    ……それに、指の動きが妙にくすぐったい。


    日天
    「もう、いいよ。あとで、そこだけ切るから」


    成臣
    「もったいないです。こんなにやわらかくて、綺麗な髪の毛を切るなんて」


    まるで、女の子への褒め言葉のようなことを言われて、背中がむずむずした。
    それから……。


    日天
    「……やわらかい、はやめてくれ。
      俺は、自分が猫っ毛だってことから目を逸らしてるんだから」


    成臣
    「どうしてですか?」


    不思議そうに聞きながら、成臣は指先をそっと動かす。


    日天
    「やわらかくて細い毛の奴はハゲるって言うだろ?」


    成臣
    「ああ……。でも、それ、ただの俗説ですよ。
      実際は、髪の毛が薄くなるかどうかに、髪質は関係ないみたいですよ」


    日天
    「本当か?」


    成臣
    「ええ。行きつけの店の美容師さんが言ってましたから」


    日天
    「へえ。プロが言うんなら、間違いないよな」


    バイト先のおっちゃんたちに「猫っ毛はハゲる」って散々脅されて、
    実は密かな悩みだったことが思わぬところで解決した。
    俺はほっとして、頬がついゆるんだ。


  1. 笑男
    「暴れるなって。気持ちよくしてやるからね~」


    身体を横向きにされたかと思うと、
    脚のあいだに硬いものがずるりと入りこんできた。
    熱くて、びくびくしてる……。
    これ……、笑男のペニスか?


    笑男
    「擦りっこ~。そ~れ、それ!」


    冗談めかした合図と共に、笑男が腰を動かしはじめた。


    日天
    「――うっ、あ……っ」


    笑男のペニスはガチガチだった。
    いつの間にこんな状態になっていたのか、
    まさに剛直って感じのペニスが俺の脚のあいだを行ったり来たりする。


    日天
    「くっ、う、ぅ……っ」


    太い幹で脚のつけ根の皮膚を灼かれ、
    硬い先端で陰嚢や萎えたペニスを突き回される。


    俺が元々垂らしていた先走りは
    ペニスの根元やその奥にまで伝い落ちてたみたいで、
    笑男の腰の動きに合わせて、じゅっ、じゅっと、粘りつく音が響く。


    日天
    「あ、あ……っ。な、……何、すんだっ」


    笑男
    「ん~、素股~」


    耳もとで笑った笑男が、俺の脚を押さえつけてくる。


    笑男
    「ほら、もっと脚、締めて。そのほうが日天も気持ちよくなるから」


    笑男の手に押されるがまま、俺は腿に力を入れた。


    笑男
    「あ~、そう、そう。いいわ~。日天も気持ちいーっしょ?」


    笑男が腰の動きを大きくする。
    ずんずんと後ろから突かれて跳ね上がるペニスが、また硬くなる。


    日天
    「あっ、あっ……」


    確かに気持ちいい。
    いいけど……、何で、俺……、笑男に素股なんかされてるんだ?
    釈然としなかったけど、そんなもやもやした気持ちはすぐに快感で覆い尽くされた。