日天
「あ……」
キスをされた。
すごく軽いキスだったけど、
あすくはそれを何度も繰り返して来た。
日天
「ちょっ……あす……」
何度もキスしてくるから、上手く喋れない。
でも、あすくはそんな俺を見て笑っていて、
ほんの少しだけ頬を赤く染めた。
あすく
「俺、日天の事、ちゃんと思い出せて良かった。
日天も覚えててくれてありがとね」
日天
「……こちらこそ」
あすく
「俺は、宿にいた頃とはちょっと違うけど、
それでもあっちでのことは全部覚えてる。
ちゃんと覚えてるんだ」
あすく
「日天への気持ちも、忘れてないし変わってないよ。
今でも……好きだよ」
日天
「俺も……」
好きだ、と返そうとして言葉に詰まる。
本当にそれを口にしていいのか。
あすくの足を引っ張ることにはならないのか。
駅前で会った前田という男の言葉を思い出して、
それ以上何も言えなくなってしまった。